三朝温泉から鳥取砂丘
三朝温泉 旅館大橋へ
鳥取県には古くから名の知られた温泉がいくつかある。
関金温泉、東郷温泉、皆生温泉、三朝温泉。
今回、三朝温泉を選んだ理由は、ラドン含有量が日本一と謳われているからだ。
ラドン温泉とは微量の放射能を含む温泉で、世界的に見ても珍しい温泉のようだ。
微量の放射能を取り入れるとホルミシス効果が見られ、活性酸素の抑制、癌発症の抑制、免疫の活性化などの効果があると言われている。
三朝温泉は、今でも鳥取県第2位の集客の温泉地で、近代的な大規模ホテルとともに昔ながらの温泉旅館もある。
今回は三朝温泉でも最も古い源泉を持つ、旅館大橋を選んだ。
旅館大橋は、その昔河原に湧き出ていた温泉の上に小屋を建てたのが始まりと言われており、昭和の初めに建てられた建物のほぼすべてが国の登録有形文化財として指定されている。

今回は、二部屋続きで露天風呂が二つ付いている部屋を予約した。
この部屋は川沿いに設えてある庭に露天風呂があるため、川辺にあるため柵が巡らされており、景観はよくない。
2階3階にある客室は、露天風呂はないが三徳川のせせらぎを見下ろすことができるようだ。
この日はラジウム温泉を楽しみたいので、4時にチェックインしようと、途中の観光を省略して三朝温泉に向かった。
古き良き宿 旅館大橋
倉吉から三朝温泉には、国道179号線の途中で天神川を渡り、三徳川沿いに入っていくと三朝町の市街地に入る。
市街地を過ぎ温泉への分岐を入ると、すぐに温泉街に入る。
温泉街の道に入ると、ほどなく旅館大橋の看板が目に入る。
玄関先には小さいながらも車寄せがあり、せり出し屋根のある玄関は古の風情を感じさせる。

玄関先に着けると、仲居さんがすぐ出てきた。
広い玄関に入ると、一枚板の上がり框がしつらえてあり、靴を脱いで上がると、正面の喫茶コーナーに案内された。
桜餅とお茶のふるまい、正面には三徳川が流れている。
時がゆっくり流れる優雅な雰囲気に包まれる。


一頻り旅館大橋の説明の後、長い廊下を歩き、階段を下りて、今回の客室「ひさごの間」に案内された。
ひさごの間には、ベッドのある寝室と居間となる部屋が二つあり、居間では布団も敷くこともできる。
小さな庭にはヒノキの湯舟と陶器製の湯舟の露天風呂が二つある。

露天風呂は、源泉からの引湯で、すでに湯が張られていた。
手を付けるとまだ熱い。
夜遅くには、ちょうどいい湯加減になるようだ。
朝入る時は湯も冷めているので、一度湯をすべて流して改めて湯を張りなおして入るよう指示があった。
小さいシャワーと洗い場も横に設えてある。
ラジウム泉
旅館大橋には自噴泉が5つあり、すべてがラジウム泉である。
中でも名物の「巌窟の湯」では、それぞれ泉質が異なる下の湯、中の湯、上の湯という3つの温泉が湧き出ており、下の湯、中の湯はラジウム泉、上の湯は世界的にも珍しいトリウム泉で世界一の含有量を誇っている。

旅館大橋にはもう一つ「せせらぎの湯」というお風呂があり、こちらは整備された岩風呂のかなり大きな露天風呂がある。
こちらも源泉かけ流しのラジウム泉のようだ。

二つのお風呂は、男女の入浴が時間によって区切られており、巌窟の湯は夕方から夜9時までが女性、9時半から深夜と早朝から10時までが男性で、せせらぎの湯はその逆になっている。
夕食は6時半からなので、一息ついて早速せせらぎの湯に行った。
せせらぎの湯は、横に長い旅館のひさごの間から玄関を横切って、長い廊下の突き当りにある。
お風呂の入り口の手前には、休憩室もあり、マッサージチェアと自動販売機がある。
脱衣場は、内装を新しくしたのだろうか、明るく整理されていて気持ちのいい脱衣場だ。
鍵のついたロッカーではなく、脱衣かごに衣類を入れるタイプで、貴重品入れの鍵付きの小さなロッカーも別に用意されていた。
風呂に入ると、左右に洗い場が並んでいる。
掃除の行き届いた綺麗な洗い場だ。
その向こうに半露天風呂になった湯舟がある。
そして衝立で仕切られた向うに、もう一つ庇のある露天風呂がある。
どちらも広い岩風呂であるが、湯舟の床は平たんになっていて、足を延ばして座ると肩まで浸かることができる。
湯温もちょうどいい。
この日は客はあまりいないのだろうか、湯から上がって着替えている客が一人いるだけで、風呂にもだれもいない。
僕独りの貸し切りだ。
身体を洗って、奥の露天風呂に入る。
露天風呂と言っても、川縁にあるので目隠しに塀が巡らされていて外は見えない。
ゆったりと足を延ばして湯舟に浸かる。
ラドン含有量日本一と謳っているが、無色透明の湯はラジウム泉の実感はない。
でもラジウムの効果を効かせたいと、30分も湯舟に浸かっていた。
確かに部屋に戻っても、まったく湯冷めはせず、ぽかぽかと身体の芯が温まっているような感覚だ。
ラジウム泉の効能は、免疫力の向上の他、血行促進、疲労回復、美肌効果、アンチエイジングなどが期待できるとされているが、効果がすぐに実感できるものではないようだ。
部屋に戻ってほどなく、夕食になった。
今回は、メイン料理を選べる夕食をセレクトして、私は和牛の網焼きを頼んだ。
夕食は会席。どの料理も手をかけた料理で、並べられたたくさんの料理を見ているだけでも楽しい。
小食の私には明らかに量が多そうなので、少しづつ残しながら、一応すべてに手を付けた。
食事を終えて部屋に戻ると、いつものことながら、睡魔がやってきた。
9時のお風呂の入れ替えまでひと眠りすることにした。
目が覚めたら、もう一方の風呂に入るつもりだ。
しかし、ラジウム泉の効果だろうか、目が覚めたのが深夜の0時を過ぎていた。
4時間近くも寝てしまった。
どちらの風呂も1時に一旦閉まる。
これから風呂に行っても、30分も入っていられない。
それならばと、部屋の露天風呂に入ることにした。
部屋に案内された時には、かなり熱かった湯も、深夜にはちょうどいい湯温だ。
僕は、深夜に露天風呂に入るのが好きだ。
山間の温泉の露天風呂で、星空を見ながら湯に浸かるのは、至福の楽しみだ。
だがこの日は雲が覆って、星は見えなかった…。
小一時間、湯に浸かって、その後は温まった身体を椅子にもたせ掛けて独りの時間を楽しんだ。
巌窟の湯
再びベッドに入ったのが、2時すぎ。
その前に4時間も寝たので、4時過ぎには目が覚めた。
5時から風呂は再び開くので、朝一番の風呂に行く。
待望の巌窟の湯だ。
巌窟の湯は、河原に湧き出ていた時のまま手を加えていないため、湯舟の中はゴツゴツと岩が重なっており、立っても胸の高さまである深い所と足を延ばして座っても腰までしかない浅い所がある。
下の湯と中の湯は湯舟の底から温泉が湧き出ており、中の湯は泡を伴って湯が沸き出ているのが分かり、下の湯は高温の源泉でかなり熱い。
上の湯は二人入るのがやっとという小さな湯舟で、やはり岩が積み重なっていて、腰を下ろすところに困るほどだ。

湯舟にゆったり座れるところがないので、長い時間湯舟に浸かるのが難しい。
結局、20分ほど浸かって、出てしまった。
温泉は、このような野趣あふれる温泉が好きだ。
僕は温泉に行くとなると、ほぼ間違いなく野趣あふれる露天風呂のある温泉宿を目指す。
温泉の質より、昔ながらの自然を満喫できる雰囲気を楽しみに行く。
この巌窟の湯も、ゆっくりラジウム泉を楽しめなかったが、その昔ながらの温泉を楽しむことができた。
因幡の白兎伝説の白兎神社
この日は、鳥取砂丘と砂丘美術館に行く予定だ。
旅館大橋を9時前にはチェックアウトして、鳥取砂丘に向かう。
鳥取市街地の手前にある白兎神社に寄ることにした。
白兎神社は、因幡の白兎の伝説の地で、神社の周りにはウサギに因んだものがあちこちに見受けられる。
また因幡の白兎の伝説では、ウサギを助けた大黒様が八上姫と添い遂げる話になっているので、白兎神社は縁結びのご利益で知られている。
白兎神社の駐車場は、国道の向こうに日本海が見えるところにある。
すぐ横には日本海が見渡せる展望台があり、歩道橋を渡ると海岸に降りれるようになっている。
駐車場から参道になっている階段を100mほど登る。
参道の横に並ぶウサギの像には、何故か白い小さな石が積み重ねられている。
神社に参拝して御朱印を頂くと、お守りの横に白い石を数個入れた袋が売られていた。
この石を参道のウサギの上に置くと、縁結びの願いが叶うらしい。
像の上に積み重ねられた白い石がこれなのだ。
縁結びにはまったく縁のない年齢だが、面白そうなので一袋買った。
白い石には朱印がおされている。
袋に入っていた4つの石を、ウサギの上にそれぞれ重ねて駐車場に戻った。
この日も高い波が打ち寄せている海岸を見ながら、鳥取砂丘に向かう。
鳥取砂丘
鳥取砂丘へは、西の白兎神社から鳥取市街を抜けたところにある。
鳥取バイパスで市街地の外れから、鳥取砂丘の案内板に従って砂丘道路に入る。
砂丘道路は整備された2車線の道路で、走りやすい。
砂丘のメインの駐車場はこの砂丘道路沿いにある。
今回は砂丘美術館にも行くつもりなので、美術館の裏側にある市営駐車場に向かう。
鳥取砂丘入口の交差点から砂丘展望台に向かうと、丘の上に砂丘センターがあり、その前はかなり広い駐車場だ。
この駐車場から鳥取砂丘へは、有料の砂丘観光リフトがあり、砂丘道路の上を跨いで砂丘に行くことができる。
砂丘の向こうには日本海が広がっている。

砂丘リフトの降り場が砂丘の入り口になっていて、メインの砂丘駐車場から上がってくる客もいる。
砂丘に入るところにラクダが一頭繋がれていた。
昔は、砂丘の馬の背までラクダに乗って登れたのだが、今はラクダに乗って写真を撮るだけのようだ。
ほとんどの人は馬の背を目指す。
馬の背は、海からの風で吹き上げられた砂の丘だ。

砂丘の入り口からみると、馬の背はそれほど遠くはみえないのだが、歩いて15分ほどは見た方がいい。
しかもオアシスと呼ばれる水たまりからは、かなり急な上り坂をのぼらなければならない。
柔らかい砂に足をとられながら馬の背に上るのは、かなりハードだ。
馬の背に上がると、目の前に日本海が広がっている。
遠く向うに、隠岐の島も見ることができる。
この日は風が強く、白い波が海岸に打ち寄せていた。

帰りは風紋を見ようと、北側の斜面を降りる。
この斜面は特に砂が柔らかく、足を砂に置くとズズッと足が滑り落ちる。
砂丘入口から馬の背へまっすぐ向かうと、人が歩くのでほとんど風紋は見ることはできないが、北側の斜面には、わずかに風紋が残っていることが多い。
風紋とは、風によってできる砂の模様のことだ。
風紋ができるには、適度な風と乾いた砂が必要で、人が歩くと砂が固まって風紋ができない。
馬の背の北の斜面は人があまり歩かないので、風紋が時々見ることができる。
この日もところどころ風紋が残っていた。

砂丘美術館
砂丘からまたリフトに乗って砂丘センターへ戻り、砂丘美術館に行く。
砂丘美術館は、車を停めた市営駐車場の砂丘センターと反対側にある。
駐車場に一旦戻り、砂丘美術館のサブゲートから砂丘美術館に入った。
砂丘美術館は、一年ごとにテーマを変えて歴史や伝説をもとに、砂を固めて造形された建物や人物などが展示されている。
数年前に行った時は北欧編で、アンデルセンの童話やサンタクロース、ノルウェーの妖精トロルの伝説などが展示されていた。
今年のテーマは、日本。
身近なテーマだけに、どのようなものが展示されるか興味があった。
砂像というのは、崩れやすく不安定な素材だけに、細かい造形や微妙な表現が難しいのだろう、若干写実性には欠けるような気がする。
逆を言うと、よくここまで不安定な素材で造形できるものだと感心させられる。
今回は、日本神話から始まって戦後の日本まで、日本の歴史を追った物語や伝説に基づいた像が展示されていた。

帰途へ
砂丘美術館を出た後、砂丘駐車場に移動して昼食を摂ることにした。
砂丘駐車場の周りには、レストランやカフェがある。
昨日の昼食が、モサエビと白イカの海鮮の丼だったので、この日はカフェで洋食で済ますことにする。
近くのカフェでスパゲティで昼食を摂って、帰途に就いた。
今回のツアーの一番の目的は、三朝温泉の旅館大橋へ泊まることだった。
ラジウム泉は、無色透明で匂いもなく即効性は感じられないが、免疫力の向上や血行促進などの効果は後々効いてくることを期待している。

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