第3日 松島
松島へ
いよいよ本格的な南東北ツーリングに出発だ。まずは松島へ向かう。
出発前にホテルで朝食。出発前に予約した際、朝食付きで予約していなかったので、チェックインの時に朝食を予約した。980円。すぐ近くにコンビニがあるので、そこで適当に買って部屋で済ますという手もあったのだが、朝コンビニまで行くのが億劫に思ったので、朝食を予約した。
朝食はごくありふれたビジネスホテルの朝食だ。和食のおかずが数種類、洋食のおかずが2,3種類、パンとコーヒー、ジュースや牛乳がある。パンは3,4種類ある。いつものように洋食で済ます。
9時頃出発。今日の行程はそれほど距離もないが、予定では、松島で観光遊覧船に乗ろうと思っている。
松島は、中学生の時修学旅行で行って以来だ。その時は遊覧船に乗り、どこかのお寺に行った。お寺の案内の人がとても面白く案内をしてくれた事くらいしか記憶にない。
松島の観光案内を見ると、いくつか観光地が紹介されていたが、どこもそれほど魅力的なところがない。松島でもっとも勧められた観光は、遊覧船と瑞巌寺だ。そこで観光遊覧船に乗り、瑞巌寺へ行くことにした。
地図で見ると、松島の観光遊覧船乗り場の近くの駐車場はほとんどがバイクの駐車は禁止になっている。そこで出発前に観光船の事務所に電話してバイクの止めれる駐車場を聞くと、松島センチュリーホテルの裏側の菊池駐車場がバイクを停めれるとのこと。観光船乗り場までは、歩くとかなりの距離があるが、致し方ない。菊池駐車場へ向かうことにする。
9時にはホテルを出発した。
松島までは県道8号線で行く。8号線は片側2車線だが、仙台市内は交通量がかなり多い。大阪から名古屋港、仙台港から仙台市内と走行距離が200kmを越えたので、途中ガソリンを入れる。
北海道の経験から観光地にはGSがない場合がある。それに観光地のGSは、観光客とみるとガソリン代を他より高く請求されることがある。GSが多くあり販売競争をしている都市周辺のGSで、できればセルフで入れるGSが無難だ。
松島の国道45号線に入ると、観光地なのに大型トラックやトレーラー、それに地元の一般車が多く走っている。どうも観光地に来たという感じがしない。
菊池駐車場へバイクを入れる。大きな駐車場に車はほとんど止まっていなかった。バイクを中央のスペースに停め、入り口横のプレハブでバイクの駐車料500円を払った。国道を出て観光船乗り場へ向かう。
観光遊覧船に乗った。
広場に出る手前に観光船チケット売り場の表示を見つけた。2,3人並んでいる列に並び、チケットを買う。係員が広場の向こうの桟橋に停めている船の1つをさし示して、あの船に乗ってと言った。
桟橋の近くまで行くと、船の係員らしい人がチケットを持っている人を桟橋の方へ誘導している。チケットを持っていない人を勧誘しているらしい。観光船は2,3社が競合しているようで、同じ桟橋に違う社名の船が3,4隻泊まっている。
コロナ禍で観光客が減っている中、客の獲得に必死なんだろう。桟橋から離れた場所にチケット売り場を設けたり、桟橋への入り口に人を立てて勧誘したりするのも戦略の一つなんだろうね。
確かに広い広場に観光客はまばら、修学旅行などの団体も中学生の小さな団体が1組しか見当たらない。
さし示された船の乗船口で改札し、船に乗り込む。船内の1階の席は満席だった。この会社の戦略は成功しているのかもしれない。僕はその戦略に乗ってしまったようだ。
後部デッキも人が大勢乗っており、欄干べりはスペースがない。船内の一番奥のカウンターでグリーン席のチケットを販売していた。船の2階はグリーン席らしい。1階が満席だったので、グリーン席は満席かどうか聞くと、まだ少し空きがあるとのこと。600円を追加で払って、2階席に上がった。
2階席もかなりの人で埋まっていた。2階席の後部デッキは、まだ人が少ない。後部デッキの欄干に寄り掛かって出港を待った。
松島は、波打ち際を削られ、上に松を中心とした木々が乗っている小さな島が点在している光景が、美しいとされており、芭蕉もここを訪れ、感動したと謂われている。


実は「松島や ああ松島や 松島や」は、芭蕉の句ではない。芭蕉は「島々や 千々にくだきて 夏の海」という句を詠んでいる。
それぞれの島は浸食が進み、いくつかの島はコンクリートで補強されている。


東北震災の津波で松島の島の木々が流されたのではないかと危惧していたのだが、松島の津波は2m ほどだったようで、島は変わらず木々を茂らせていた。
観光船は1時間ほど。波に浸食された奇形の島が目を楽しませてくれた。グリーン席に乗ったおかげで船好きの僕には、この1時間結構ゆったりとした気分で楽しめた。
日本三景は、広島の宮島、丹後の天橋立とここ松島だが、どこもあまりに観光地化が進み、本来の景観の美しさや魅力に欠けるように思うのは僕だけだろうか。日本三景というブランドだけで、観光客は訪れ、観光客目当ての本来の魅力に欠ける店が目立つ。観光地には、その地に見合った独自性が必要だと思う。
松島には、四大観、五大堂、福浦島などいくつかのフォトスポットがあるのだが、今回は後の牡鹿半島と女川で人と会うので時間がない。桟橋から近い五大堂と雄島だけにすることにした。
船を降り、五大堂へ向かう。五大堂は伊達政宗が再建した国宝の建物。

ここからの島々の景色は、なかなか美しい。

かなり大勢の人がいたが、建物も景観も大きな感動はなかった。手早く写真を撮り、雄島に向かう。
松島はその昔は死者浄土の霊場だったそうで、その名残が雄島にある。現世との縁を切る橋、渡月橋を渡り、雄島に入る。

雄島には石の塔婆や洞窟があちこちにあり、霊場の雰囲気が見られる。島の海側に回ると松島の海に浮かぶ島々が見渡せる。
雄島をぐるりと一周して、瑞巌寺に向かう。
瑞巌寺は、伊達正宗が再興した寺です。中尊寺、毛越寺、立石寺、と共に東北四大寺院に数えられている。震災では津波が境内にも入ったようだが、幸い松島は津波が低く、参道が潮に浸かった程度だったようだ。ただ潮の塩害で松がいくつか枯れたようだが、今はそれも整理され、非常に美しい参道になっていた。
本堂は国宝で、拝観料は700円。本堂の各部屋の襖絵が見事だ。
瑞巌寺を出る頃には、昼食時になっていた。遊覧船乗り場の国道を挟んだ向かい側には、飲食店やおみやげを売る店が並んでいるが、いくつかはシャッターを下ろしていた。
松島は牡蠣が名物だ。駐車場に戻る途中に「もり田」という牡蠣料理の店が開いていたので、そこで牡蠣定食を食べた。普段牡蠣料理を食べ慣れている僕には、松島の牡蠣は特筆するようなものではない。
駐車場に戻り、この日のメイン、牡鹿半島コバルトラインに向かう。
牡鹿半島コバルトライン
牡鹿半島コバルトラインへは、松島から復興の状況を見たかったので、海沿いの道を走った。石巻や女川町は、津波の被害が大きかったところだ。
石巻の海沿いには高い防波堤が築かれていた。東松島を越えると、津波に流された跡地には工場や倉庫が建っている。国道398号線沿いの市街地も津波に全て流されたところだが、今はほとんどのところで建物が建っている。ただ盛り土を入れて、全てが平坦になり、一件一件の敷地が広くとられている。全体的に開放感のある街が広がっていた。
一方、女川町に近づくと空き地が目立った。松島から女川町まで国道は整備され、広く走りやすい。ただまだあちこちで小さな工事が続いている。
女川町からコバルトラインに入る。コバルトラインは、最近のSNSで最高のドライブルートとの記載を見て、どうしても走りたかった道だ。
牡鹿半島は、金華山で有名だ。金華山とは山ではなく。牡鹿半島の先に浮かぶ島のこと。島には黄金山神社がある。奥州三大霊場(出羽三山、恐山、金華山)の一つとして有名で、奥羽藤原氏、伊達家によって庇護されてきた。
天気予報やニュースで、東北の太平洋沖を地震の震源地や台風のルートとして示す時に「金華山沖」などと言われるので関西人もこの名前を知っている。岐阜城がある山も金華山という。
この金華山に渡るには、鮎川港か女川港から船が出ているが、定期船は日曜日にしか出ていない。
女川町からコバルトラインに入る。震災後整備されたきれいな道だ。東北や関東のライダーにはよく知られている道、多くのライダーがこの道のことをブログに書いている。
たしかにリズムよく気持ちのいいワインディングが、ゴールの御番所公園展望台まで続く。西伊豆スカイラインを思い出す。
途中、谷川や新山浜へ降りる分岐はあるが、牡鹿半島の先端を廻って鮎川浜までほぼ一本道だ。
だが、本来ゴールの御番所公園展望台に行く分岐の一本手前の分岐に入ってしまった。計画では、ゴール地点からの帰りにこの道を通って、鮎川浜へ向かおうと考えていた道だ。
結局、新山浜へ出る手前で曲がって、牡鹿半島の北の海岸沿いの道でコバルトラインに戻ることにして、帰りにコバルトラインで鮎川浜に降りることにした。しかしこの道は、途中1車線になり、見通しもきかず、車もバイクもあまり走っていないようで道の両側に枯れ葉が積もっていた。
天気が良かったせいもあるが、コバルトライン本線は景色も良く、気持ちのいいライディングが楽しめた。
御番所公園は駐車場も広く、きれいに整備されており、駐車場にトイレもある。展望台に上がるとはるか太平洋の手前に、金華山、網地島、田代島が見渡せる。芝生が敷かれていて、ベンチなども設置されていた。駐車場から展望台に向かう吊橋は、通行止めになっていた。


鮎川浜へ降りる。
御番所公園からコバルトラインを通り、先ほど間違えた道を鮎川浜へ降りる。
鮎川浜は、牡鹿半島の先端にある大きな漁港だ。捕鯨の町として有名で、かなり大きな漁港である。
しかし、東北震災の津波で、町の中心部がすべて流された。youtubeにも鮎川浜に押し寄せる津波の壮絶な動画が掲載されている。(https://www.youtube.com/watch?v=YT6TP1uck_4)
現在は復興事業が進み、きれいに整地されている。しかし以前は家が密集していた中心部は、ほとんどが空き地になっていた。人口も震災前の半分近くに減っているようだ。
鮎川浜から海岸沿いを松島にもどる。
女川町、石巻と海岸沿いを走りながら、町はきれいに整備され、復興事業が進んではいるが、震災のことを思うと心が痛む。
なぜ松島に戻ったかというと、明日の早朝、一度乗ってみたいと思っていた熱気球体験に参加しようと思ったからだ。
松島では、熱気球体験の場所に歩いて行けるホテルパレス松洲に宿をとった。夕食は石巻でボランティアできた時お世話になった人と会食をする予定だったので、1泊朝食付きで13,000円。
パレス松洲は、松島ではかなり老舗のホテル。海側に広い庭園もあり、温泉もある。バイクは玄関横の屋根の下に停めさせてくれた。
宿泊客は少ないのだろう。一人宿泊でも簡単に予約が取れた。
一旦チェックインし、石巻まで戻って会食し、夜遅く戻った。明日の熱気球体験が楽しみだ。
第4日 銀山温泉と立石寺へ
熱気球体験は、熱気球の上から日の出をみるため朝5時に集合だ。ホテルから徒歩10分ほどのところだ。準備は着替えるだけなので、4時半に起きた。
カーテンを開けると、雨が降っている……。天気予報では9時ころから降り出すとの予報だったのだが、予報より早い。すぐに携帯を取ると、ショートメッセージが4時に届いている。「今日の熱気球体験は、雨のため中止になりました。」あぁ残念。
予約の時の注意事項に、強風や雨の場合は中止という注意書きがあり、中止の場合はできるだけ早くショートメッセージでお知らせします、と書かれていた。
松島は今日が最後。仙台に明後日にもどってくるが、熱気球体験は土日のみのため今回の旅ではもう体験するチャンスがない。
熱気球体験がなければ、出発は朝食後。もう一度ベッドに入った。
ホテルの朝食は、バイキング。さすがに観光ホテルの朝食バイキングは、フェリーやビジネスホテルより品数が多く、簡単ではあるが手作りされたものが提供されていた。このホテルでは、その場でプレーンオムレツを焼くコーナーが設けられていた。
朝食はパン派なので、数種類のおかずとパン2個をとって朝食を済ます。コーヒーは飲み放題だが、部屋にも持って帰れる。2杯目のコーヒーは部屋で飲むことにし、部屋に戻った。
9時頃になって雨は本格的に降り出していた。気温はそれほど低くはないが、山越えのため雨具が必要だろうと、下半身はスウェットの上にオーバーズボンを穿いた。さらに仙台で買ったスパッツを装備する。上のジャケットは防水防風のため、昨日の同じネルシャツの上にジャケットを羽織っただけ。
チェックアウトを済まし、バイクに荷物を詰めて、9時半ころ、銀山温泉に向けて出発。
銀山温泉は、山形県にあるため国道47号で山を越える。大崎市辺りから雨が激しくなってきた。それまででも、手袋はかなり水を吸い込んでいて、手がかじかみ始めてきた。
ルート上には鳴子温泉もあるが、この雨では観光どころではないとスルー。
銀山温泉は車もバイクも一般車両は、宿泊客以外通行禁止である。手前の大正ロマン館の駐車場に停め、バスで銀山温泉に入らなければならない。
大正ロマン館の駐車場には2時間ほどで着いたが、雨でずぶ濡れ。相変わらず激しく雨が降っている。とりあえずオーバーズボンとジャケットを脱いでレストランに入り、早めの昼食にすることにした。
山形はそばが名産なので、手打ちそばと銘打ったそばを食す。対してほかの蕎麦と大きな違いはない。この後信州まで、やたらそばを食べることになる。振り返るとここの蕎麦は、山型や信州のそばに比べて特筆すべきところはなかった。
銀山温泉は、東北でも人気の観光地だ。いつも観光地ランキングで最上位にある。今回もバイクで直接入れなくても、一番早く訪問候補地にリストアップしたところだ。
しかしこの雨、意気は消沈していた。次の訪問予定地、立石寺に向かうことにした。天気予報をみると、この後山形は雨がやや小降りになるとの見込みが出ていた。
立石寺には、1時間ほど。国道13号を南下する。天童市のガソリンスタンドで給油する。リッターあたり154円、仙台で満タンにしてからの走行距離は271.8km、リッター25.4kmだ。コバルトラインのアップダウンや山形への山越えをしたため、燃料消費率が悪い。
国道13号に出たあたりから、雨は明らかに小降りになり、立石寺では雨が止んでいた。
立石寺は、通称「山寺」と言い、寺院の前の駅名は「山寺」である。正式名は「りっしゃくじ」と読む。平安時代初期、円仁(慈覚大師)によって創建された名刹で、東北四大寺院の一つである。
山寺の駅の周辺から小さな駐車場が、かなりの数ある。この日はどの駐車場も空いていた。根本中堂にできるだけ近い駐車場へとバイクを進め、山寺の登山口近くの駐車場に停める。バイクは裏の狭いスペースに案内される。バイクの駐車料は200円だった。奥の院まで1時間半位だと言われる。
岩山にへばりつくように、多くの御堂が配置されている。入山料は、300円。最上段にある奥の院まで、石段が続いており、最上部にたどり着くまで、休憩しながら行くと1時間近くかかる。石段で装備はいらないが、ちょっとした登山だ。




雨 仙台へ
奥の院から一気に降り、駐車場へ。銀山温泉の手前から雨の所為もあり、かなり冷え込んでいる。1時間半も石段を上り下りしたが、身体は温まっていない。ちょっと薄着をしすぎたか。しかしジャケットやオーバーズボンの中は、それほど濡れてはいない。後は仙台へ戻るだけ、このまま行くことにした。
仙台までのルートを探す。googlemapは東北横断自動車道で仙台へ戻る道を支持してきたが、立石寺から、林道二口線を登り、二口峠から二口街道をへて、秋保大滝へ寄ることにした。
二口峠には、立石寺の橋を渡ってから、そのまま山の方に進んでいく。すぐに集落が現れるが、道は狭い。集落を越えると、車がやってくるとバイクでも離合できないほどの狭い道になった。一応県道のようだが、かなり不安を感じた。
そのまま進むと道はやや広くなり、ほどなく林道二口線の表示が目に入る。ここから林道のようだ。
道は明らかに山道の雰囲気、登りのかなりきついカーブが続く。林道に入ると雨が降ってきた。道の狭さもあり、スピードは上げられない。二口峠はかなり標高が高いようだ。急激に冷え込む。
ヘアピンの連続でかなりの高度を稼ぐ。上部はかなり紅葉が進んでおり、道には濡れた落ち葉が散乱している。バイクは落ち葉でもタイヤが滑る。慎重に上る。途中2台ほどの車がきたが、林道は十分に離合できた。
道が平坦になり、二口峠を越えたようだ。表示は見つけられなかった。この辺りから急に雨の激しさが増した。寒い。手はかじかみ、グリップヒーターを入れて走った。
峠の少し先に展望台があるはずだが、雨と寒さのため立ち寄る気にはならない。早く下りたく、一心不乱に走る。
山形県側と宮城県側では道の質が明らかに違う。地図でも二口峠の山形側は林道二口線だが、宮城県側は二口街道になっている。
下るとともに道が整備されている。この辺りは、自然公園として整備されているようだ。しばらく走るとキャンプ場の表示があり、建物がポツポツと現れるようになった。
雨が少し小降りになった。
この道の宮城県側の最奥の集落にでた。観光地の風情がある。ここまで観光客は上がってくるのだろう。ほどなく秋保大滝駐車場の看板が現れた。
秋保大滝駐車場はかなり広い。車は数台しか止まっていなかった。一番奥に土産物屋もあるが、その日は閉まっていた。その近くにバイクを停めた。
秋保大滝は、日光の華厳の滝、那智勝浦の那智の滝とともに、日本三名爆に数えられている。高さは55mだそうだ。
若いアベックが2,3組、相合傘で歩いていく。仙台からのデートスポットか。僕はもうずぶ濡れなのだからと傘もささず、遊歩道に入っていった。
遊歩道の先に不動尊と小さなお寺があった。2,3分歩くと滝見台に出た。滝見台からは滝の上部だけが見える。この先を下ると滝の近くまで行けるようだ。アベックが降りていく。雨と寒さで気力は萎えていた。

秋保大滝から仙台は近い。秋保温泉を越え、仙台市外に入ると車が急に多くなった。5時半になろうとしていた。日が沈み、厚い雲に覆われた町は暗い。車は点灯していた。雨は止んでいた。
ホテルの駐車場は満車で、支持されていたすぐ裏の駐車場に向かう。駐車場の係員はバイクが入庫することを知っていたようだ。入り口近くの料金所のすぐ横のスペースを空けていてくれた。
部屋は一昨日と同じ部屋を用意していてくれた。濡れた衣服を脱ぎ、身体を温めるため熱いシャワーを浴びる。もう6時半に近い。
夕食を食べに出た。今日も牛タンが食べたい。
再び、おいしい牛タンを求めて。
僕は牛タンが好物である。家でも牛タンを買ってきて、塩焼きで食べる。この日は、数ある牛タンの店でもランキング上位の店に行こうとホテルを出る。
ITで調べると「味太助」の本店、分店をはじめ「たんや善次郎」「利久」「伊達の牛タン本舗」「牛タン専門店 司」などがどのサイトでも上位を占めている。メニューを見ると、たんや善次郎が牛タンも部位に分けて提供していて、さらに牛タンソーセージや牛タンつくねなども出している。ソーセージ好きには、牛タンソーセージに魅力を感じた。
ホテルから仙台駅に向かうクリスロードの近辺には牛タンの店が集まっている。仙台駅の駅ビルの中には、牛タン通りというコーナーが設けられており、有名人気店がすべて集まって出店している。
とりあえずクリスロードを駅に向かう。まず利久の看板が目に入る。入り口には数人が並んでいた。さらに駅に向かう。たんや善次郎が駅前通りへの出口の角に出店していた。入り口から店の横の路地まで回り込んで、20人は並んでいるだろうか。これを待つのはつらいと、駅に渡った。
駅の東側のダイワロイネットホテルの1階に司が出店しており、ここの評価もかなり高い。駅のセンターコンコースから東側に行き、ダイワロイネットホテルに行く。ホテル入り口には司の看板は出ているが、ホテルの入り口があるだけだ。ホテルを回り込んでみると、ホテルの建物の横に司の入り口があった。ここも20人ほどの行列。仙台でおいしい牛タンを食べるのは難しい。6時を過ぎると行列ができてしまうようだ。一昨日はラッキーだったのかもしれない。
司もあきらめて、仙台駅の牛タン通りを目指す。牛タン通りは駅の北側の2階にある。駅の北側の1階通路の牛タン通りの表示のある階段を上がると、ずらりと牛タンの店が並んでいる。
伊達、司、利久、善次郎、喜助、有名店はほとんど出店している。司、伊達、善次郎は、ここも数人ほど行列を作っている。善次郎が一番行列の人数が多かったので、善次郎が人気なんだろうと、ここに並ぶことに決めた。善次郎駅前本店より、行列の人数は少ない。
それでも30分程待って、ようやくカウンターの席に案内された。
メニューを見ると目的のソーセージの乗った定食は、善次郎定食2550円、真中たん・善次郎定食3000円、牛タン・海鮮定食2580円の3つがあった。いろいろ乗っていて、テールスープ、麦飯もついている。味太助より割安感を感じる。その所為もあって、真中たん・善次郎定食を注文した。
真中牛タンは、牛タンの一番柔らかい部位を厚切りにしているらしい。旨い。しかし僕には、 噛めばサクッとした食感、塩加減、ともに味太助の方が口にあっているような感じだ。
ソーセージを食べる。これは普通のソーセージと大きな違いを感じなかった。牛タンそのものの食感が大きく影響するように思う。つくねはたれをつけて食べる。これは旨い。牛タンをミンチにしているのだが、コリっとした粒々が残っており、たれと微妙に相性がいい。
僕には量が多かった。膨らんだ胃を抱えて、ホテルに戻る。
満腹感と暖かい部屋で、すぐに眠気を感じ、ベッドで3時間ほど眠てしまった。
夜中に起きだし、今日までの写真と動画をPCのハードディスクに移す作業を2時間ほどした。
明日は蔵王だ。天気予報を見ると天候は晴れだが、かなり冷え込む予報。山沿いは雪になる可能性があると報じている。
予定では、蔵王ロープウェイで上に上がり、お釜辺りまでトレッキングをする予定だが、冬の山を歩くほどの防寒対策をしていない。多分山頂は零下になるだろう。
明日の蔵王トレックはあきらめる。
代わりに、中尊寺に行こうと決めた。中尊寺はまだ行ったことがなく、一度行ってみたいと思っていたところだ。北東北からのルートを検討していたときは、いち早く立ち寄り場所にリストアップした。
ただ中尊寺には仙台から高速を使って1時間半ほどかかる。さらに中尊寺から蔵王エコーラインを通って蔵王温泉に行くには、2時間半ほどを要する。朝9時に出て、中尊寺で昼食、蔵王に入るのは順調にいって4時半頃と予想する。
何とかなると判断し、明日は中尊寺から蔵王温泉のルートに変更することを決めた。
明日は、300kmほど走ることになる。かなり蔵王の山の上は、かなり冷え込むだろう。
不安を抱えながら、再びベッドに入った。
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